1. HOME
  2. ブログ
  3. マンション管理士ブログ
  4. 長期修繕計画を見直していない投資型マンションの罠

マンション管理相談室

マンション管理士ブログ

長期修繕計画を見直していない投資型マンションの罠

先日マンション適正化診断サービスを行ってきました。

マンション適正化診断サービスとは、マンションの管理運営について、日本マンション管理士会連合会が認定した診断マンション管理士により、第三者的に診断するサービスです。

この診断結果によって、マンション共用部の損害保険料が割引になったり、マンションの管理運営の状況を客観的に判断する際の指標として活用することが可能になります。

投資マンションの特徴

今回は以下のような東京都内のマンションを診断しました。

・12階建て
・約40戸
・築8年
・間取りは1Kが中心

賃貸率100%のいわゆる投資型マンションです。

区分所有者による理事会を置かずに管理会社が管理者となって管理組合運営を行う「管理者方式」、いわゆる「丸投げ方式」です。

投資型マンションではこの方式が主流になっていますが、当然メリット・デメリットがあることは十分ご理解される必要があります。

高い診断結果の中に潜む大きな問題点

さて、今回のこのマンションは、診断の結果、3段階のうち最も高い診断結果を得ました。
大きな要因となったのは築年数8年と比較的新しかったことです。
ただ、私が気になった点があります。

長期修繕計画が見直されていなかったことです。

一般的に長期修繕計画は国土交通省が公表している「長期修繕計画ガイドライン」によると、7年ごとの見直しを推奨しています。

築8年のマンションの場合、1年が超過しているだけなので、通常はそこまで大きな問題ではありません。しかし、このマンションは分譲時に設定された長期修繕計画によると、修繕積立金の積立方式は一般的な均等積立方式ではなく、段階積立方式を採用していました。これが大きな問題をはらんでいるんです。

均等積立方式による問題点

均等積立方式とは、文字通り月額10,000円の修繕積立金ならば20年後も月額10,000円という修繕金積立方式です。

それに対して、段階積立方式とは、1~5年目までは3,000円、それから5年毎に値上げしていくといった計画の修繕金積立方式です。

診断時には、計画にあった5年目と7年目の値上げを行っておりません。
というより値上げの議論すらされていないんです。なぜか?
これにはいくつか理由があります。

まず修繕積立金の値上げということの難しさです。

修繕積立金を値上げしようとする場合、管理組合総会にて普通決議を得る必要があります。

つまり、計画通りとはいえ、5年目と7年目の定期総会時には値上げの決議の必要があったということです。

実はこれがなかなか難しいんです。

通常、区分所有者がそこに居住するマンションであれば、管理組合総会の前の理事会にて、修繕積立金について話し合います。
将来のことを考えた場合、計画通りに値上げする必要があるとして、理事会で決議され総会に総会議案として上程され、総会にて決議に至ります。マンションの老朽化などは身近に感じる内容ですので、承認もされやすいです。

ところが投資向けマンションとなるとそうはいきません。

投資マンションによる必然性

投資マンションのオーナーは、投資物件を選定する際、物件購入価格、毎月のランニングコストと収益つまり賃借料からはじき出された利回りをもとに判断します。

利回りが5%だと思って投資をしたのに、修繕積立金が値上げとなって利回りが4%とか3%とかになると「話が違う!」となってしまいます

それどころか、初期の利回りが大きく見えるように、分譲時の修繕積立金は明らかに低く設定されている投資マンションも多いです。

実は、私も投資マンションの提案を何度か受けたことがあります。ほとんどの営業マンは「このマンションはランニングコストが低く抑えてありますのでお買い得です!」と提案しており、唖然としてしまいました。

ではこのように段階積立方式で長期修繕計画が設定されているマンションがこのまま値上げされなければどうなるのか?

修繕積立金の不足がもたらす暗い未来とは

修繕積立金の初期設定金額が3000円、40戸のマンションの場合、5年目、7年目、9年目にそれぞれ2000円ずる値上げする予定が全く値上げがされず10年目を迎えた場合の不足額はというと・・・。

(2000円×40戸×12か月×5年)+(2000円×40戸×12か月×3年)+(2000円×40戸×12か月×1年)=864万円の不足となります。
さらに11年目からは毎年288万円の不足となり、2回目の大規模修繕工事の時期となる24年目には、なんと累計4896万円の不足となります。

これだけの不足が出るとなると、本来計画している全ての修繕はできなくなります。具体的に言うと、塗装の剥がれや少々の割れ、金属の錆びなどは後回しにします。最近では主流となった宅配ボックスや防犯システムなどの時代に合った改修工事の余裕もありません。

その結果、時代遅れな劣化の目立つマンションとなり、高い家賃水準の維持は難しくなってきます

投資マンションで失敗しないために

この内容はあくまで仮説とシミュレーションに過ぎませんが、実は多くのマンションが抱えた問題となっています。投資マンションとはいえ、自身の資産を投じた大切な所有物です。管理会社に任せきりにすることなく、きちんと状況を把握することが重要です。

所有されている投資マンションの管理運営に疑問があるかたは是非一度ご相談ください。詳しい状況の分析やアドバイスなどもさせていただきます。

関連記事